日本学生相談学会の、新たな船出 「一般社団法人日本学生相談学会」設立のご報告(理事長メッセージ)

新年と共に訪れた新型コロナウイルス感染症拡大の第6波は、後期試験を終えた学生の春休みに多くの活動制限をもたらし、また感染者数がこれまでの波とは桁違いに増え、教職員が隔離を余儀なくされる事態があちこちで起きました。さらに、海外の厳しい戦禍の報道もあり、関係国から留学生を迎えている大学等では、とりわけご不安の募る日々を経験されていることと思います。なかなか先の見通せない状況ですが、そのような中で、真摯に学生相談・学生支援に携わってくださっている会員のみなさまに、深く敬意を表します。
さて、これまで設立準備の経過をお伝えしてきましたとおり、本学会は2022年1月24日に公証人による定款の認証を経て、2022年4月1日をもって「一般社団法人日本学生相談学会」として活動を開始したことをここにご報告させていただきます。本学会の、新たな船出です。広い海原へ、進むべき方位をしっかりと見定めながら、みなさまと共に漕ぎ出していきたいと存じます。
前身の「学生相談研究会」(1955年設立)から数えて67年、日本学生相談学会(1987年設立)となって35年という歴史をもつ本学会の3月末時点での会員数は、正会員(個人会員)1,471名、機関会員294団体、賛助会員1団体となっています。本学会の特色は、高等教育機関に勤務し、何らかの形で学生の相談に携わっていることを入会条件としており、専門領域も職種も多様な会員によって構成されているところにあります。相談実践に基づいた研究を行い、その知見を高等教育現場に還元するための研修を行い、会員の学生相談・学生支援に関わる資質向上を目指すことを活動の中心に据えています。職場の異動等による入退会者が常にある学会ですが、全体では徐々に会員数は増えており、法人化後も発展拡大していくことが見込まれています。
任意団体としての本学会は2022年5月8日の総会をもって解散し、その後財産移管の手続きが進められる予定です。それまでは2つの団体が併存する形になりますが、会員の方々には何も特別に行っていただくことはありません。法人化に伴う最も大きな変更は、学会運営に関する会員の権利のあり方です。これまでは、正会員が3年ごとの選挙により理事・監事を選出し、理事が理事長と常任理事を選んで、それらの役員が学会の実際的な運営を行っていました。本学会は法人化にあたって代議員制を採りましたので、今後は正会員が 2年ごとの選挙で代議員(法人団体の「社員」)を選出し、代議員が理事長、副理事長、理事、監事を選んで、それらの役員が学会運営を行います。また、副理事長が事務局長に就任し、監事は会計監査だけでなく、理事会に出席して理事の職務の執行全体を監査する役割を担います。なお、法人化後の運営をスムーズに行うため、本年度末までは任意団体の第11期の役員が引き続き務めることになっています。
法人化後第1期(一般社団法人設立時)の役員は、以下の14名です。
理事:高石恭子、高野 明、斉藤美香、杉江 征、寺島吉彦、安住伸子、奥野 光、鈴木健一、大島啓利、水戸部賀津子、岩田淳子、設樂友崇
監事:窪内節子、福留留美
代表理事:高石恭子、高野 明(以上、敬称略)
学会が法人となることの最大の意義は、社会的な信用を高め、組織として社会に発信し、貢献することがより可能になる点にあります。学生の多様化に加え、長期化するコロナ禍によって、学生への心理的なケアや教育、ならびに成長支援の重要性がさらに高まった今日、日本学生相談学会が高等教育や社会に向けて果たすべき使命は、ますます大きなものになっていると言えるでしょう。「一般社団法人日本学生相談学会」として、私たちは、今までよりさらに「社会に対して何が貢献できるか」を考えていく必要があります。目の前の学生一人ひとりの声に全力で耳を傾け、一人の援助者としてこちらから語りかけることと、時代社会の波の音に耳を澄まし、一人の実践者・研究者として社会に向けて何かを伝えようとすることとは、決して相反する営みではありません。両方の視点を行き来しながら現象を複眼的に理解することによって、新たに見えてくる世界があるはずです。そのような挑戦の道筋を、これからもみなさまと共に手繰っていきたいと考えています。今年度は、多くの大学等で対面授業が本格的に再開されます。とはいえ、感染症防止対策が取られた中での制限あるキャンパスライフが続くことに変わりはありません。2020年春に本学会役員によって立ち上げられた「学生相談における遠隔相談導入に関する検討チーム」は、2021年度から「コロナ禍の学生相談検討チーム」として活動していますが、法人化後もしばらく継続し、その時々に必要な発信を試みていく予定です。もっと広く会員に伝えたい、あるいは社会に知ってもらいたいコロナ禍での学生相談の取り組みがあれば、ぜひ情報をお寄せ下さい。
末尾になりますが、これまで本学会の活動にご理解とご協力をくださっている文部科学省、独立行政法人日本学生支援機構、ならびに各高等教育機関と関連学術団体のみなさまに改めて感謝を申し上げます。コロナ禍により、参集して船出のご挨拶をすることは叶いませんが、今後も変わらずご支援を賜りますようお願い申し上げます。

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