ごあいさつ

理事長:齋藤憲司(東京工業大学)

<はじめに>

 日本学生相談学会は人生のたいせつな局面で模索を続ける学生たちのために、そして学生たちを支え、育て、ともに生きようとする教職員のために、50年以上にわたって学生相談•学生支援に係るあらゆる側面にかかわり、体制と活動の充実に向けてちからを注いでまいりました。現在では、正会員は1.200名を越え、また機関会員も250団体以上を数えるに至り、我が国の大学•短大•高専等の教育コミュニティにおいて生じる様々な諸課題を集約しつつ、実践の中から紡ぎ出された工夫と知見を共有していくことから、学生の成長とこれからの高等教育に資することをめざしています。
さて、琉球大学において開催されました第31回大会総会(2013年5月)より、第9回役員選挙を経て選任された常任理事および理事の方々とともに、新しい体制でこれからの3年間、本学会の役務を担っていくこととなりました。そこで、新理事長の立場からごあいさつをかねて本学会の紹介をさせていただきたいと存じます。

<本学会の活動> 

 まず学術団体として、言うまでもなく第一の核は研究力の増強にあります。年次大会における研究発表の増大と質的向上、学会誌『学生相談研究』の定期刊行と投稿呼びかけ、学会推進研究の募集等を通じて、研究に関する種々の支援を行なっており、「学生相談学」の確立と発展に向けて今後とも努力をかさねていきます。また「学生相談機関に関する全国調査」を3年ごとに行なって、研究と実践に活かしうる基礎データを集約しています。
本学会の2つめの核は研修•職能に関する活動にあります。相談•支援の力量をあげ、かつポジションを確かなものにするために、ワークショップや学生相談セミナー、さらに半世紀を越えて高く評価されてきた「全国学生相談研修会」を開催しています。また、専門職の資質を保証する「大学カウンセラー」資格及び教職員の立場からの援助力を担保する新資格「学生支援士」の認定を行なっています。前期に改訂された「倫理規程」及び「倫理綱領」に基づいた啓発も進めていきます。
3つめの核として交流•相互支援に係る活動が挙げられます。国内外の学術団体や専門機関との交流を展開するとともに、諸活動の基盤となる着実な予算案の策定と執行、「学生相談ニュース」や本Webを中心とする広報の充実、さらには役員任期ごとの特命として今期は『喫緊の諸課題に関する実践的なガイドライン(仮称)』の作成に取り組んでいきます。もちろん、東日本大震災からの復興を期して開始した「学生相談仲間による相互支援」の営みも継続していく所存です。

<今期の姿勢と方向性>

 今期の役員に期待されていることは、まずこれまでの成果をしっかりと継続し、さらに発展させていくこと、そして学生と大学をめぐる諸情勢を見極めつつ時機にかなった施策を打ち出していくことになるだろうと思います。すべての活動は、多くの先輩方や現在の会員の皆さまのボランタリーな活躍によって発展してきたものであり,理事長を務めさせていただく私もまた、大学の専任カウンセラーとして日々の相談活動に従事しつつ、同時に学内外の諸状況を見渡して本学会の活動を推進していく立場にあります。それは常任理事会および理事会メンバーも同様な状況ですので、時間と労力のやり繰りに苦労はありますが、逆に現場にいる者だからこその気づきとアクションを繰り返していくことで、皆さまの期待に応えていければと念じております。
学生相談の領域では、3期前の理事長であられた苫米地憲昭先生を主査として(独)日本学生支援機構より発行して頂いた『大学における学生相談体制の充実方策についてー専門的な「学生相談」と総合的な「学生支援」の「連携•恊働」—』、2期前の理事長:鶴田和美先生の発案のもと当時の全理事が執筆した『学生相談ハンドブック』(学苑社)、そして前期の理事長:吉武清實先生を中心に企画してこの3月に発刊に至った『学生相談機関ガイドライン』と着実に指針が積み重ねられてきました。これらの一層の活用を期するとともに、次のステップとして“学生のいのちと将来と権利”に関わる諸課題ごとに実践的なガイドラインを作成して、現場でのご苦労をすこしでも緩和することができればとイメージしています。

<改めて、本学会へのおさそい>

 相談件数の増加や相談内容の複雑化に加えて、キャンパス内外で求められる役割も増大しつつあることと存じます。この現状の中で、いかに専門家あるいは教育者としての力量をあげ、実績を積み重ねていけるか、そして燃え尽きることなく持続的•安定的に機能できる自分と相談•支援機関でありえるか、どなたも工夫と模索を繰り返しておられることと思います。そんなときに、この学会の存在と活動を思い起こして頂けるような活動体でありたいと思います。今期の役員一同の活躍に、どうぞご期待ください。そしてぜひごいっしょにそれぞれの活動をもりあげていければと思います。みなさまからの時に応じてのご助言とご支援をこころよりおねがいする次第です。
学生相談に従事するカウンセラーの方々はもちろんのこと、各大学等のキャンパスにおいて学生支援に関わる教職員のみなさまのご入会•ご参加をお待ちしております。
教育行政に係るみなさま、高等教育に関わる実践者•研究者のみなさま、今後ともどうぞよろしくご支援•ご指導のほどおねがい申し上げます。

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